ハイドンのバリトン三重奏
今年はハイドンの没後200年にあたり、どちらかというと地味ながら、記念イベントが催されたり、企画物のCDが色々と発売されたりしています。そんな中、バリトンという楽器をメインに据えた室内楽の全集が発売されました。
雇い主であるエステルハージ侯爵がバリトンの演奏を好んだため、ハイドンは膨大な数の三重奏を書いています。バリトンが廃れてしまったためか、ヴィオラ、チェロ、バリトンという組み合わせが地味すぎるためか、これまでハイドンのバリトン作品のまとまった録音はありませんでした。ホーボーケンの作品リスト、全曲聴取を目指す人にとって(そんな人いるのか?)、バリトン作品の録音のないことが大きなネックになっていましたが、エステルハージ・アンサンブルによる21枚組みのバリトン三重奏曲全集の発売で問題は一気に解決です。
ありがたいことに、今日、まつもと市民芸術館でエステルハージ・アンサンブルのコンサートが開かれました。演目はハイドンの三重奏が4曲、ハイドンがエステルハージ侯爵家で宮廷楽長をしていた時のコンサートマスター、ルイジ・トマシーニの三重奏が1曲で、曲の合間に講師によるレクチャーがありました。
ハイドンのバリトン三重奏はエステルハージ侯爵のためだけに書かれたもので、侯爵の音楽の好み(イ長調、ニ長調、ト長調以外はだめ)や演奏技術のレベル(アマチュアですから)といった制約から、曲数が多い割りにバリエーションに乏しい(似たり寄ったりで飽きやすい)など、珍しい話を聞くことができました。古楽器ゆえ音量は小さく、市民芸術館のメインホールよりもっと小さな会場で聞くのがふさわしい曲ばかりでしたが、バリトンの生演奏に接する機会が今後あるとは思えず、良いコンサートにめぐり合えたと思います。
左:終演後のステージ上のバリトン。エステルハージ侯が使っていた楽器のレプリカ(表側は7本のガット弦、裏側には10本の真鍮の共鳴弦)。
中:ロビーでのサイン会。私も全集のブックレットにサインをいただきました。奥から、ミヒャエル・ブリュッシングさん(バリトン)、マリア・ブリュッシングさん(バロックチェロ)、アンドラーシュ・ボリキさん(バロックヴィオラ)。
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